2016年9月10日土曜日

ジパング 感想 打ち切りや圧力はあったのか

ジパングという太平洋戦争を題材にした漫画がありました。作者はかわぐちかいじ。深蒼海流(源平合戦)ではないほう。

現代の自衛隊のイージス艦が太平洋戦争時代にタイムリープし、その時代の軍人が「理想郷ジパングを作り出す」ために未来の知識を濫用するという話。

結局、目的を前に軍人草加巧は死んでしまい、その後改変された歴史の先の日本は、現実の日本とさほど変わらないものとなった。改変されそうになった日本を、自衛隊側の人間(角松洋介)が政治的に干渉し、現代の日本に近づくよう誘導していたからだった。

・・・という話。だと思っていました。

主に不満としてあげられる点は、帝国海軍の軍人であった草加巧が思い描いたジパングが、実現されないどころか、具体的にどのようなものであったかも説明されなかった点、結果的に今の日本とかわらない結果になったように見え、タイムリープして戦争中に活動した意味がわからない点・・・あとは主人公のやっていることの意味がわからないなど(大規模な戦闘を無視して多数の死者が出ることを傍観し、目の前で死にかけている一人を見逃せずに干渉することになったりする場当たり的な行動や、最後に自分だけ死なずいい生活をしている終わり方など・・・)


今となって読み返してみて、上記のような感想が結構変わりました。艦これなんぞをやって戦争の流れを知ったおかげだと思いますが。

結構、作者が最初に思い描いた通りに終わっているという印象です。

日本が戦争に負けず、死者数を抑えられ、原爆で市民が死なず、そして現代の日本のような発展へとつながるという感じでしょうか。

ジパングというのは、どちらかというと戦前日本の要素の強い国になるのかと思っていましたが、戦後日本(敗戦日本)をベースとして戦争に負けなかったという結果を付け加えたようなものだったのだろうと思います。


そう感じた理由は、草加が日本の行く末を見たときに、戦後日本の復興、発展を肯定的に捉えていたためです。高度経済成長を果たした日本の姿に涙を流し、「歴史という物語の中において、この国の未来は輝いている」と表現するなど、戦後の日本の発展は肯定されています。自衛隊のあり方や角松の考え方には、角松の前ではまったく評価していませんが(ただし、山本五十六との会話では自衛隊の専守防衛を肯定的に伝えているようにも見える。専守防衛だから手出しはしてこない・・・という皮肉もあるだろうけれど)

滝参謀(滝栄一郎)という草加巧をライバル視する人物がいますが、彼に対しては傍観者でいることを望み、自分のように未来を知って行動する、ある種の「超越者」としてではなく、単なる一般人という立場を与えています。

滝には、「平和な日本で戦争のことを誇張もせず、隠すこともなく、ありのままに語る老人の姿を思い描いている。」と語ります。滝にはそういう未来を手に入れてほしいと。

滝は、お前にはそのような穏やかな未来は得られないと反発していて、この未来を手にする資格がないのは原子爆弾を手にした草加側のように扱っていますが、この「戦争をあるがままに語る」資格は現代の日本にもないものになります。草加が変えたかったのはこのあたりではないだろうかと。

しかし、歴史を改変され、アメリカと対等に近い講和を結んで終戦を迎えた日本に対し、菊池は「戦争を続けるべきだったという声もまだ多い。この世界の日本人には反省が足りていない。この日本(講和日本)は俺たちの知る日本(敗戦日本)ほど高度な発展は望めない」というような内容を語ります。

敗戦と戦後の発展は無関係とは言い切れない。あるいは、その後のアメリカによる占領、安保体制なども影響するかもしれない。そのあたりを上手く制御するために、角松は動いていたのでしょう。

この点で、アメリカの軍人が語っていることに、戦後アメリカ政府にエイリアンが干渉していて、そのエイリアンはキューザックという名前で呼ばれているという噂が広まっているとのこと。。そしてこのキューザックという名前はクサカに似ていないか?と話しています。実際に動いていたのは角松なのに、草加がアメリカ政府に影響を与えたと解釈されているのは、これは角松が草加の考えに従って動いていたということなのでしょう。草加の最期での、「聞いたらあなたはもう戻れない」という言葉のとおり、角松もまた草加が考える「理想郷ジパング」を受け入れたのではないでしょうか。

間逆の考えを持った2人が、それぞれ別々に動いているだけだった物語でしたが、最後にお互いの理想を認め合い、新しい日本を作ることにした・・・という見方もできる。角松としては、もうどうにもならないところまできてしまったから、次善の策として後始末をしたという見方もできなくはないけれど。


そのほか、戦争の流れ。草加の行動は意図が読みづらいが、結局戦線を縮小させるために動いていたようです。

・ガダルカナル
草加が角松と袂を分かつきっかけになったのは、ミッドウェー後に日本がアメリカ、オーストラリア分断のために行ったガダルカナル攻略の際、これを勝利させようと動いていると解釈されたためでした。

草加は、ここでの戦闘ではアメリカにダメージを与え、今後日本が講和を求めた際に受け入れやすくするための国民世論を作り出しておきたかったと述べています。また、歴史上このとき死ぬことになるのは航空基地設営のための、武装の少ない土木工作を主目的とした人員でした(もちろん民間の作業員ではなく軍人ではあるが、上陸部隊を迎撃するための支援、防衛拠点を用意されていなかった様子)

その後、ガダルカナルでの抵抗を続けさせた好戦派の参謀(辻政信)をガダルカナルに突撃させ、彼に撤退の必要性を実地で認識させるという荒療治を行い(川口支隊の前に、一木支隊と一緒に上陸した?)、ガダルカナル、ソロモン海、ニューギニアからの撤退の足がかりとした。

ほか、玉砕のはじまりとなるアッツ島からの撤退、物資の輸送を困難にした潜水艦対策にはみらいも参加し、また撤退を急いだことによりマリアナ沖海戦を早期に起こし、サイパンを要塞化するなど、ここでの戦闘に備えていました。

このあたりはアメリカ側の攻撃機の到達距離から本土を守るためのエリア、日本からの物資、兵員の輸送可能な距離などを考えた絶対国防圏というものが後に考えられ、しかしこの"防戦"が採用される段階というのは攻勢に出るのが不可能になったという背景があったためで、もう防戦を行うための戦力がなく、アメリカ側の戦力も生産、補充の結果充実していたために防衛しきれなかったという失敗談があります。
正直、防戦してどうなるのかという部分もあるけれど、それで戦力を削いで講和に持ち込むという考えはわからないでもない。

・満州、インド、中国共産党
満州ではラストエンペラー溥儀の暗殺、インドではイギリス戦力を削ぎ、インドの独立を支援し?、毛沢東に石原莞爾が会いに行く・・・など。
陸軍を撤退させるなり講和終戦を認めさせるなりのために溥儀を暗殺したようです。その後ソビエトはどうなるんだろうなあ・・・インドがどうなったかはよくわからない。
毛沢東に会いに行ったことで、日本と中国共産党が手を結ぶことをにおわせ、アメリカを警戒させて終戦に向かわせる材料にしたのだろうか。ソビエトも警戒しそうだけど。

・ドイツ
ドイツへヒトラーを暗殺させに部下を向かわせたものの、その間にポーランドの科学者から濃縮ウランを受け取り・・・という流れがあったものの、ここでもしヒトラー暗殺に成功していたらアメリカは太平洋に全力で来られるようになる気もする。日本が早期に講和を結んだあと、ドイツはどうなったのだろうか。
アメリカ(ルーズベルト)は対ドイツ参戦のために日本から宣戦布告してもらいたかった部分も大きいようで、当時の日本への評価を見ると、ナチスと手を結んだという形で、満州やら上海への攻撃、ユダヤ資本との関係などで国際的な立場が危うくなった面もあるようだ。
対ソ連へのけん制として結んだ部分もあった三国同盟も、結局はドイツからソ連へ攻撃をはじめてしまっていたり、またドイツ側としては対ソ連への協力を期待して日本と同盟を結んだのに、日本がアメリカを戦争に引き込んだあたりがあちらとしては誤算だと言われていたり・・・
三国同盟のあたりは判断に難しい。近衛や松岡外相も世界情勢が変化した1年後あたりには後悔していたとも言います。(独ソ開戦後の情勢下でなら同盟を結ばなかった、またはこの時期に権力があれば破棄するなどの行動をとっていたということだろうか)




これらの点で、草加が戦争を終わらせようと動いていたことは受け入れられたのですが、そこからどうやって日本とアメリカが終戦に至ったかがよくわからない。

陸軍には宮城事件に参加したメンバーのリストを憲兵に渡すなどして戦争継続の考えの強い人物を拘束したりしているが、1943年時点ではもっと多く戦争継続を唱える人がいたことでしょう。海軍のほうは善玉だとは言い切れないでしょうが、米内も復帰したしでまとめられないこともないだろうか。一応空母や戦艦の数もマリアナで多数目撃しているわけですし。
近衛文麿に総理として国をまとめてほしいと声をかけに言っているけれど、このころの近衛なら覚悟をもって動けただろうか?

アメリカ側は原爆の存在やら、角松からの証言やらで終戦に動いたと判断できなくはない。ドイツのほうが主戦場だろうし。(ルーズベルトが共産主義者のスパイに洗脳されてソ連のいいなりだったとか、日本人に対する偏執的な憎しみに囚われていたとかの陰謀論はジパングには反映されていない)

正直、陸軍とそれをフォローする国民をどうまとめたのかだけはわからない。
「突然終戦になったのは納得できなかった。打ち切りの可能性もある」という感想に、私は日米間でどういう動きがあったのかに対して言っているのかと思っていました。しかし、今から思えば日本(主に陸軍)をどう止まらせたかあたりもとても重要な問題なはずです。日本の生命線である満州は、肯定の死後結局どうなったんだろう。

2016年9月6日火曜日

雨港基隆 日本語版発売!・・・・・・・せず?

雨港基隆が今年7月に日本語版を発売予定と聞いていたが、何の音沙汰もない様子

雨港基隆 日本語サイト

9月20日に続報とも書いてあるけど、これは去年とかの話だったと思う。

ネット上で何らかのアナウンスがないかと探してみても、開発凍結かな?という程度のうわさしかない。
ギャルゲーの延期は日常茶飯事ではあるが、何の情報もないというのは怖い。


このゲームは台湾民主化の中で大変重要な事件である228事件の様子を描いたギャルゲーです。
エロはないらしいけど設定上グロはあるので年齢制限あり。
ヒロインも台湾(本省)人、外省人(国民党側)、日本人と台湾人とのハーフのような感じになっている。

wikipedia 2・28事件

この事件以降、政府側が反政府活動をするものを言論弾圧、逮捕どころか堂々と殺害する白色テロ時代が続き、だいたい蒋介石が死ぬ1975年あたりまで台湾の暗黒時代が続くのだそうな。

この事件については長らく口に出すのも許されない時代があったようですが、今では戒厳令も解除され、記念碑も作られ、ギャルゲーも作られsteamで世界に向けて配信されています。しかし英語版も日本語版もなしなのが現状。

この作品の続編にあたる『她和他和她的澎湖灣』はsteamで配信されるゲームでは英語、中国語(繁体字)の字幕が入る予定。
(繁体字が使われるのは台湾、香港、マカオあたり)





体験版より、字幕切り替えの例
だが男だ。

上の画像は主人公にあたる尹暁風。ギャルゲ、ラノベ主人公らしい消極的な性格で、台湾へ逃げることになったものの台湾という土地にあまり興味がなく、台湾で暴れていたと聞いている日本軍にもいい感情は持っておらず、早く戦争が終わって故郷に帰れるようになる日を待っている。

こちらの事件は澎湖七一三事件という、中国国民党による外省人(山東あたりから台湾へ逃げる戦争難民)を虐殺した事件?らしいのだがこの事件についてはwikipediaにも日本語記事がない。
なので事件のきっかけやらがよくわからない。


話を雨港基隆に戻すと、この作品にはラノベ版も出ており、そちらの日本語訳は小説家になろうあたりに一部投稿されている。原作者の許可ありとのこと。

小説家になろう 雨港基隆 桐花雨

twitter上にもう少し先まで翻訳した人もいて、リンクからドキュメントファイルが見られる

台湾ラノベ翻訳するマン
https://twitter.com/harakoatom/status/647584109997395968

あるていどゲーム版と同じシナリオなのだろうか?

こちらの日本語化されたものを読んでいると、外省人の女の子(メインヒロインの一人)が自己紹介するにあたり、

「私は陳鈺。金の玉と書いて鈺よ」
と言っていたりして主人公はびっくり。しかしもう台湾に日本人もいないことだし・・・と考え、別に何も言うまいという態度をとる。

そうなると苗字のほうの陳もまたチ○コをイメージしてつけたのだろうかとか思ったりする。いや台湾でもメジャーな苗字であるのにそれは・・・

深い意味はないと解釈してとラノベ版を読み進めていくと結構このキャラに関する背景が明らかになってくきたのだが、そこからネタバレ覚悟で、この陳さんってひょっとして…とググってみたものの、父親の名前は別だった。

陳峰・・・・・・これはチン・ポウと読めばいいのだろうか?


2016年1月27日水曜日

ムシブギョー、少女前戦のキャラ初出

ムシブギョーの最新話で登場した壱与というキャラのデザインが中国のスマホゲー(日本でも配信予定)のキャラに酷似しているとのこと。

デザイン的には・・・Kar98Kはナチスドイツで使用されたライフルということで、ナチスの制服を検索してみると似た感じのものはあるので、共通の元ねたがないものかと少し探してみる。

ひょっとしたら、本当に偶然かもしれないじゃない。


帽子、腕章、ボタンの配列など。

 NS.MH アルゲマイネSS将官用ロングコート 

ボタンがダブル(二列)なのは軍服というよりコートのほうなのだろうか

カギ十字あたりはそれぞれごまかしている。

コートにチェーン(モール?)をつけるのかどうかは知らない。

スカートのレースとかブーツとか、これは似たもの史実にあるのかなあ・・・ないだろうなあ・・・
このあたりはコートをワンピース風の制服にアレンジするという点も一致しているということか。

ゴスロリファッションで似た感じのものを探すことはできるかもしれないが、キャライメージとして「軍服とゴスロリを合わせた感じで!」と指定されたとして、偶然の一致というのも難しいいよなあ・・・

ということで、やはりよく似ている。


ムシブギョーの初出は2016年1月6日。

少女前線のキャラについての説明では「登場予定のキャラ」となっているものもある。
これは日本ではまだ出ていないということか、中国でもまだ出ていない、最近デザインされた登場予定のキャラということなのか?

・・・と思ったのだが、去年(2015)の10月25日に日本語でフィギュア化を伝える記事も見つかった。


新興フィギュアメーカー「HOBBY MAX」より「少女前線 モーゼルKar98K」フィギュア化決定


そもそも初公開は8月だったとのこと。

漫画家の人がどうデザインしたのかは知らないけれど、パクリと考えられても仕方がないくらい少女前線のほうが先だったようですね。というか、やっぱり不自然に似すぎ。