2015年12月23日水曜日

ロボットが労働者の雇用を奪う時代

アマゾンで安く買えた『大変化する株(1990)』を読んで。

鉄腕アトムだったか火の鳥だったかで、ロボットが一般化した社会で問題になってたりした気がします。

ロボットの普及により、人は働く必要がなくなるどころか、仕事をとられて給料が手に入らなくなり、生活が苦しくなる人が増えるというディストピアな設定で、労働組合がロボットの解雇を要求し、ロボットを破壊するデモンストレーションが行われていたりするような話。

中国、産業用ロボット購入数で世界一に

勢いではすでに中国が上回っている様子ですが、現在使われているロボット数では日本、アメリカのほうが多い様子。作るのも日本が強いしね。

しかし、アメリカよりも日本のほうが多いというのは、国の規模なんかを考えてもいまさらながら驚くべきことなのかもしれない。

日本の車が世界の市場を席巻し、貿易摩擦を起こしていたころからもう長い時間がたちますが、ロボットによる効率化などで対抗しようとはしなかったのでしょうか?

と、そこにはやはり上述のロボットと労働者の関係があるのではないだろうか。
もちろん、現在の日本でも、人力での流れ作業がないわけではない。食べ物などやわらかかったり、果物の大きさの不均一さがあったり、また車ほどに単価が高くないという場合には人間の対応力の高さはまだ機械にはない。

日本でロボットの導入を行ったのは機械が人間の代わりに全部やってくれるユートピアを作るためにやったわけではなく、工業生産の効率化のためであったはず。上述の株の本にも、オートメーション化(ロボット導入)を進めている企業は伸びると、株価が上がる企業の選び方にも挙げられていました。

上述の本、1990年1月に発売され、株の本としては株価がまさにピークになったあたりに出た本になります。その当時、もっと株価が伸びると思っていたろうと思いまして。きっと明るい未来を描いているんだろうなと。

当時の情勢では、ジャパンアズナンバーワンとして国外債権の多さやら、世帯あたりの貯蓄額の伸びやらを誇っており、今後も株価は伸びるだろうと予測していました。
12月末の日経平均株価3万8915を上回り、1990年中には4万を超えるであろうと、さらには個人的な予測では1990年前半のうちに4万超えを達成することも十分可能との見込みである・・・と。

結果をみると、実際にはここから株価は下がっていくことになります。株価のピークは1989年12月、不動産のピークは…市街地価格指数のピークが1990年9月ごろらしい。バブル崩壊が叫ばれたのはよくわからないが、景気指標では1990年11月にピークがきていて、数字の上でのバブル景気は1991年2月まで。

就職の学生側の売り手市場は1992年度まで?で、バブルの象徴みたいにテレビでもいの一番に出てくるジュリアナ東京は1991年5月から1994年8月末まで。1993年11月ごろの警察の指導によるお立ち台撤去あたりから客足が減ったというので、それまではかなり盛り上がっていたのでしょう。

槇原敬之の『どんなときも』は1991年6月に公開された映画『就職戦線異常なし』の主題歌であったそうな。
就職活動に苦労する話ではあるのだけれど、バブルの時期のかなり贅沢な悩みの中での就活の模様。
友達との見栄の張り合いで就職先を妥協できないみたいな部分があった様子ですが……まあ贅沢な悩みですわな。

これらの株価と社会の動きを見ていると、確かに株の値動きは実経済よりも数年早いのかもしれません。

本題のロボットの話にもどります。

株価が上がる企業の選別方法について上述の本で書かれていました。1990年(実際書かれたのは1989年)のころ、大手企業の中でも多くの株が発行されていて、株家も高い水準にあった大型株では価格は下がり気味となっていて、株価を押し上げる原動力となっていたのは小型の株が伸びてきていたことにあるようです。

これはこれで今となっては株価が伸び悩み始めていた兆候なのではないかとも考えられる気がしますが、その当時株価を伸ばしていた企業の目安となるものは、株式の分割とオートメーション化、それにともなうリストラでした。

1990年の本に何の臆面もなくリストラという言葉が出てくることに驚きました。もっと後になって、クビの言い換えとして叩かれたころのことしか知りませんでしたが。

Wikipediaでも「リストラはペレストロイカというロシア語を英語化したものだ(要出典)」と書かれています。出典なんて知らないものの、1985年ごろから始まったらしいソ連のペレストロイカ同様、本当に最初のころはプラスの意味で使われていたらしい。

オートメーション化というのは、つまりはロボット、機械による自動化であり、ロボットの導入であるはず。
著者は、「オートメーション化による効率化が企業の利益を増大させ、それに伴う人員の再配置のためのリストラを行う企業は今後大きく伸びることが見込める」と書かれていて、ひょっとしたらクビではなく工場数を増やしてロボットのオペレーターとして再雇用することを意味しているのかもしれない。

また、景気がよかったころには解雇しても特に再就職が容易であるとの背景から問題にされていなかったのかもしれない。

企業のリストラが一般化したのはいつからですか??[Yahoo知恵袋]

株の分割が実際の企業の利益にどう意味があるのかはよくわかりませんが、任天堂なんかが株の50分割なんてのをやっていることがいい例として挙げられています。
分割は、高騰していた株の単価をさげつつ数をふやし、多くの人が手にできるような状態にして、時価総額(株価の合計)のさらなる上昇を目指せるようにするという点で、確かに株価の上昇には寄与するようです。


日本でロボットが普及したことには、工業用ロボットが出始めた時期・・・あるいは実用段階になりつつあった1990年ごろに、バブル景気によって労働者の解雇が容易だった時代が影響しているのではないだろうか。そして、そのような異常な盛り上がりを経験していない以上、他の国ではロボットを普及させるチャンスがないのではないだろうか。

あるいは、ロボットを普及させたときの労働問題などについてすでに起こっていて、ロボットの導入台数をある程度で止めなければならないのかもしれない。

現在の日本では、若者の給料の低さが問題になっており、それの一端は年功序列でバブル期以前の社員の給料を下げるわけには行かない・・・というような部分もあるのですが、ロボットの普及もあるんじゃない?と思ったり。

なお、都市部の平均収入は1997年までは伸び続けていたらしい。
消費税、アジア通貨危機あたりですかね。このころにはバブルの不良債権もだいたい片付いていたらしいのですがどうして不況がこんなにのびたのやら。


ロボットが使われていること、あるいはロボットを使うことによる社員ひとりあたりの収入は、果たして伸びるのか抑えられるのか。

ロボットが働いてくれる分を社員で分ける・・・と考えれば、つまりロボットの給料をもらえてしまうと考えれば社員の給料は上がる。

ただ、ロボットの維持費、ロボットの所有者である企業の取り分等を考えるとわからない。

また、物余りという状況の中では、ロボットの生産力と維持費で見られるコスパは悪化しているわけで、会社はロボットを従来の能力に維持するために投資しながらも、社員の取り分を減らさねばならないとなっていくのかもしれない。

仮に今日本から産業用ロボットをなくしたら・・・・・・
そのときは、きっと生産性がガタ落ちになり、生産品の価格はやたら上がり、同時に収入も大きく下がって日本崩壊となるに違いない。
しかし、ならばこの狭い国土にアメリカの倍の数のロボットがあるにもかかわらず、現在の日本の苦境は何なのだろうと考えるとわからなくなってしまう。

なぜ、他の先進国は日本のようにロボットを導入しないのか?
なぜ、ロボットがあっても日本人は豊かにならないのか?

実際のところ、高度経済成長からバブルのころなんかが異常なのであって、現在の総中流社会なるものを維持することは、実質不可能だったのかもしれません。デフレが終わってからじゃないと判断できませんけれど…て、今もまだデフレなのだろうか?ちょっとだけ上がってるのかな。

2015年12月6日日曜日

ユーフォニアムは児童ポルノらしい。マジかよ那珂ちゃんのファン辞めます

糞箱も売ってくるか。

久美薫氏のユーフォニアム批評について、

・批評内容を読んで同意できない
・実害が生じるから叩く

の2つの立場から、批判する理由を考えていきます。今回は下の、この批評による実害のほう。

前半のほうは前の記事

実害があるから叩いているなどと言ったら、久美氏などは「みなさん痛いところを突かれてお怒りの様子。効いてるwww効いてるwww」と喜びそうですが、今回は別の話。


この批評は、特にアニメなんて興味の無い層に浸透しかねない危険を持っています。

幸いにして、「金管楽器は男性器。金管楽器を持った少女の絵はすでにポルノ」という意見については全く受け入れられていないので、この論理をまともに受け入れる人はごく少数でしょうけど。

こういうのは、ゲーム脳、アダルトゲームで人間性が破壊されるといった主張が今までにも出ていましたが、それらと共通する似非科学みたいなものです。

似非科学は何故信じられるか?という本がありました。読んでませんが。しかし、今回こういう怪しい批評を広めるために必要なものは以下のようになります。

・書き手の肩書き(医師、専門家、○○年の実績)
・批評内容の"インパクト"
・批評対象への嫌悪感

これくらいである。上記に正しさなんてものは一切含まれていない。
インパクトについては、なるべく分かりやすく、かつ内容の風呂敷を大きく広げてやることで、短い時間に強い衝撃がドン!と来ることになる。それがインパクト。

今回は、萌え美少女の出てるアニメは海外ではポルノ!しかも今問題になってる児童ポルノ!世界中で日本だけが異常!

という内容で、大変分かりやすく「萌え豚死ね」と結論が出る。

多数の著書を持つメディア批評の専門家先生が言ってるので間違いないらしい…と肩書きをチラつかされると、どうにも弱いものです。そして、そもそも批判されているのはオタクやらオタクで構成された業界であるアニメ業界。

このような論評を見たアニメに興味の無い人は、比較的受け入れてしまいがち。
そういう論理は、「オタクはキモいと思うが、別に明確な根拠はなく、過去にオタクに嫌な思いをさせられた個人的なエピソードがあるわけでもない」という人の心のスキマを埋めてくれる。
心の奥底にあった、オタクへの蔑視に形を与えてしまい、目に見える形でいじめ、社会的批判などを展開する足がかりを作ってしまう。

短くまとめると、
「偉い先生がオタクはクソだって言ってた。だから俺もオタク叩くわ」
となるのです。

自分に自信の無い層の人間が、人種差別などを通して自分の優位を示せる相手を見つけると、まるで自分が優れた人間であるかのように錯覚できてしまうこととも似ている。

ネオナチに無職が多いとか、ネトウヨはニートが見下せる相手探して韓国人(在日)を馬鹿にしている…などといった論理と同じです。

一人ひとりがどれだけ正しい意見を持っているかとかは関係なく、業界批判が広まってしまえば収集は大変になっていく。戦いは数だよ兄貴。

これらのポルノ批判が正しいものであるなら、考え直さなければならない部分もあるのですが、正直根拠に乏しい部分があり、額面どおりに受け取るわけにはいかない。

さらに、この久美氏は自分の批評の着地点について考えていない様子。

批評というものは、議論の行き着く先のゴールを求めて展開しているわけではなく、単に思いつくままに自己表現しているだけのものです。訳の分からないことを言って、何を求めているのかが分かりにくいのでスタンスを明確にしてほしいという意見が出す人もいるわけですが・・・最初からゴールなど用意されていないんですよね。

なので、議論のゴール地点を堅持する必要もなく、
「金管楽器は口に咥えないから違う?咥えているように見せるだけで成功なんです」
「批判が多いのは痛いところをついたから」
「(適当な論理を展開し)私はもっと深いことを考えて批評しているからあなたの意見は間違い」

とだけ言っておけばなんとなくそれっぽく見える。言い逃れがうまければそれだけでやっていける。



日本が児童ポルノの温床だというのはアグネスあたりが言ってますね。
その実態はAV女優が海外では児童に見えかねないだとか、欧米で問題視している児童というやつはティーンエイジ未満のことで、ティーンポルノは大人気とか、設定年齢18歳のエロゲーのヒロインがランドセル背負ってパンチラしてるとか、ハイエースするという新たな動詞が生まれつつあることとか、全く無根拠な部分から、かなりアウトに近い部分までさまざまです。

(ティーンポルノ:十代の女の子が出演するポルノ。ただし実年齢は19以上。日本の女子校生ものAVみたいなもの。ただし、このティーンポルノ、日本人から見ると余裕で30代以上)

日本では洋モノポルノは60歳以上のババアAVより需要がない

とはいえ、アグネスも金儲けのために言ってるだけですし。

児童ポルノというやつは、撮影の段階で被害者が発生しますし、またそれを見た側が子供を襲うようであれば、児童ポルノは犯罪を助長しているということになります。(ソースはない)

そういったポルノの流通と犯罪の件数は無関係とも、また人によっては逆の相関がある(流通を増やすと性犯罪が減る)という主張もあります。

もっと根本的なところとしては、性犯罪を起こさないよう教育を見直すところから始めればいいんじゃないかな?とか、最近パラオでの日本の教育について書かれた本を思い出しつつ思いました。

仮に児童ポルノについては、流通量が増えれば児童を対象とした性犯罪が減るとしても、生産、流通させるわけにはいかない面がありますが。生産する段階で被写体はまず被害者と言えるでしょう。二次元作品なら被写体の被害者はいませんが。


google検索 エロゲーメーカーminori、海外からのアクセスをブロック

あなたの国で、日本が児童ポルノを拡散させていると批判されており、我々もバッシングを受けているので要望のとおりに対処いたします。

みたいな形で海外からのアクセスをブロックし、海外のファンへの問題提起を行ったことも。
根本的解決にはならないでしょうが、日本側だけに問題を押し付けるのも違うと思うのです。

また、近年の少女の商品化としてはアイドルの低年齢化があり、だっこ会とか問題になりました。
ああいうのはさすがにダメだと思う。 ノータッチですよ。

ユーフォニアムは巻貝であり女性器の暗喩に決まってるだろJK

久美薫という人が、響け!ユーフォニアムを児童ポルノと批評し、話題になっています。

特に、原作のラノベではなく京アニの作ったアニメのほうを。

おたく文化と児童ポルノ

批評というのも罪なもので、それが多くの人に受けいれられるとは限りません。

エヴァなんかを見て「セカイ系」と分析、批評したことについて、それへの反対意見なんかも多くありました。
それ以後、アニメに対して「セカイ系www」とレッテル張りをすることは、その作品に批判的で、、未熟な子供の娯楽と切って捨てるような部分も出てきていたため、現在ではもはやセカイ系と分類すること自体が作品への批判であると受け取られても仕方の無い状態になっていると思います。


以前、私が好きなラノベ『イリヤの空、UFOの夏』について、主人公のロゴスがどうの的な哲学的な分析を行った人がいた気がします。

その際に、2chの作者、作品ファンのスレッドにてこの批評が正しいのかと話題になりましたが、結局は間違っている、ズレているという意見が大勢を占めました。
その際、「批評っていうのは作品をいじりまわして好き勝手言う新しい作品。批評家先生の自己表現なんだよ」とうそぶいてみせた人がいました。

今回のものもそういう面があることは否定できません。また、この人の名前で検索すると出てくる記事として、

アニメ業界の皆さんが久美薫に怒りをぶつける裏事情


などもあり…上のtogetter2つはともに本人が自分でまとめたものなんですが、要するに炎上芸人ってやつですね。まずは目立ってナンボってところでしょう。

そのほか、批評の手法を紹介している本のamazon書評にて、

「批評」とは何か? 批評家養成ギブス(amazon)

>「それは作家の意図ではない」と言われても批評は平気。なぜなら批評は作家自身の無意識まで暴くのだからと言う。

このあたりはまさに、久美薫氏が展開している「あなたがどう言おうと私が言っていることが真理。反論があるのは痛いところを突かれてっしまったからですよね?効いてるwww、効いてるwww」という論理と一致する。

ユーフォニアムが男根であることも、アニメ業界を食いつぶしているのが年長のアニメ業界人であるとも思いませんし(スタッフの待遇は、業界の内から外から、改善されていってほしいとは思っている)、またツイッター用資料として近場の幼女を盗撮した件を指摘されると、今度はポスター上のキスしてる男女を撮影して「盗撮!」とごまかしてみたりと…あまり真に受けるべきではない気がするのですが、こうも簡単に大勢が釣り上げられてしまっているのは何故か。


理由としては、

・この批評が正しいとは思えないから
・この批評が実害をもたらすものだから

このあたり2つの事情があるからでしょうか。

まず、正しいと思えない点について。

ユーフォニアムへの批評としては
・『響け!ユーフォニアム』は児童ポルノと見分けることが難しい。それは児童ポルノとアニメ作品の間に明確な境界線を作ってこなかった業界側に責任があるのである
・世界(西洋人)からみてそうなのだから、日本の文化や表現の自由が歪められる結果になったとしても、それにしたがって修正されねばならない
・そもそも、京都アニメーションは文学的美しさを持った原作本にセックスアピールの暗喩をちりばめ、性に訴えかける低俗な"商品化"を行っている、意識的なポルノの創造を行っている組織である
少女が大きな楽器を抱えている様は、楽器が男根の暗喩であると分かる

…といったことを言いたいらしく、特に最後の"楽器が男根"という部分に「ないわー」と批判が殺到している。フロイト先生だって楽器になんて言及してたっけ?

楽器=男根は、もうそう見えるんならそう見えるんだろうの世界なので、今後ペンでも魔法のステッキでも酸素魚雷でもなんでもチ○コに見えてしまうなら仕方がないよね。

フロントミッションオルタナティブ(戦争ゲーム)のライフルの名前が全部チ○コのスラングな件


で、それ以外について。

・児童ポルノと日本のアニメの境界
久美氏は、手塚治虫の作品が外国で批判された件について、「子供に見せるべきでないものを見せている。規制しろ」といわれたことをセックスのことと断定していますが、これはおそらく勧善懲悪ものの単純な作品にしろだとか、血や暴力の描写が多いと人間性が破壊されて・・・みたいな話と思われます。

そういう面で、日本と海外とでは表現の自由やら、方向性(正義は必ず正しいというアメリカ的な表現と、それ以外(日本以外でもヨーロッパでも)での、正義の味方が生み出す被害者の苦しみ(成敗された悪人の子供が生活に困ってしまうとか)みたいなもの違いとかは優劣ではないですよね。

・西洋人の価値観が正しいか・・・といったらそうでもない。グロバカってやつですね。
というか、西洋コンプだと気づいているんならそれに批判的になってもう一度自分を見つめなおしてみてほしいもの。

・幾多のパンツアニメを抑えてなぜユーフォニアムが選ばれたか
ディスク版で規制解除されてパンツやら乳首やらが出てくるアニメでもないのに、なぜにユーフォニアムが槍玉にあがったのか。

女の子たちが吹奏楽で青春を謳歌しているだけだ!それを応援していて何が悪い!と主張する男性視聴者に対し、それにセクハラ的な嫌悪感を抱く女性がいてもおかしくないと思います。

これは、作品に登場する女の子に内部構造を求めるか否かというような議論を見たことがあります。『美少女の現代史』とか、アニメ漫画の歴史を分析するような本とかに出てきます。

ピーチ姫のように、ただクッパに攫われて主人公の助けを待つだけの中身スカスカのハリボテを肯定するか、さもなくばワガママだったり気まぐれだったりといった個性を有し、主人公(視聴者)の意思だけではどうにもならない思惑を持って動く、いわゆるめんどくさい女を作品中に登場させるか…という部分です。

アルドノアゼロのアセイラム姫は、最初は前者のようなハリボテの存在であり、主人公二人(イナホとスレイン)は彼女のために平和な世界を作ろうと戦うのですが、最終的にアセイラムは平和のために自ら動き、自身の望む平和な世界を作り出しました。これは作者側(虚淵?)による、「お姫様」へのアンチテーゼであったと思います。


・少女のリアルな感情を覗こうとすることは裸を見ようとするようなもの

視聴者は、アニメ中のめんどくさい女の子を通して、リアルな女の子と同じく思い通りにならない相手を通しながらも、最終的には理解しあえ(というかデレる)、ハッピーエンドを迎える展開を求めています。(一方でチョロい子も多いけれど・・・)

「アニメを通して女の子を理解しようとする」というのもアホな響きですけれど、結局のところ男性作者が書いた男性向けの作品で出てくる女の子がリアルなものと考えてはいけない。
読者の側も

・めんどくさい女は嫌い
・相手の考え方を知りたい。そうすればこっちが合わせられるから
・絶対に理解しあえないけれど、女の子の心をストレートに描いた作品は評価する

と、さまざまな立ち位置があります。
ちょろい女の子(チョロイン)はラノベ乙、逆にとことんめんどくさい女は「女性作者のオナニー。萌え豚発煽って笑ってるとこ」と批判されることになる。結局残るのは、半端に女の子の内面を描いているようでいて、現実には存在しない架空の存在となる。毒を抜かれて培養されたワクチンのような、無害で自然界には存在しない女の子っぽい何かでしかない。

ユーフォニアムにも、多少男性視聴者の手に余る部分が存在します。

ユーフォニアムのジョイナス先輩クズすぎてなんで尊敬されてるのかわからん
「心底どうでもいい」発言など、理解が難しかったり受け入れられないと反応が出るのは仕方の無いこと。
私は特に強い思いいれも反発を感じることもなく、作品の流れを眺めていましたが…

>女性作者が描く『うる星やつら』のラムちゃんの裸はセクシャルな意味を持たず、あたるに向けたストレートな好意の表れ。むき出しなのは肌ではなくラムちゃんの心

と、前出の「美少女の現代史」で分析されていますが、心を見せることは裸をみせることと同様に抵抗を持つことであるというのも確かなことです。女の子の心を見ようとする男性視聴者、それに対し全裸の心をご開帳しようとした京アニに対し、女性の立場から嫌悪を示した…ということなのかもしれません。

2015年10月10日土曜日

童貞を殺す服に殺された童貞たちの墓場

この「童貞を殺す服」という言葉、イラストを描く人が冗談で、「構造が難しすぎて、実物を見たことないような人(童貞)だと細部を間違えかねない」という意味で言ったのだとか。

ピクシブ百科辞典 童貞を殺す服

女性に免疫のない童貞がイチコロになるあざとい服装だとずっと思ってました。


コンピュータでネット越しに悪事を働くのはハッカーではなくクラッカーだとか、そういう議論もありましたが…
萌えの語源やら、ツンデレの意味やら、壁ドンとは何ぞとかありましたが、この「童貞を殺す服」というものもまた議論を呼びそう・・・でいてまったく議論にならない。誤解のほうが定着しすぎですね。

ニコニコ大百科では、あざとい服装としか紹介されてない。

ところで、この言葉をピクシブで検索してみると、いろいろなキャラがこの服を着た画像がヒットします。

さながら、童貞の墓場といった有様なのかもしれません。まあ、私も実物見たことないですが…

2015年9月5日土曜日

スキャナによる本の電子化

本を一度切ってばらさないと読み込めないわけですが、切るのが結構手間ですね。いざ切るかと思うと、捨てるのと似たような覚悟が必要になってきますし。
(切らないのもあるけど、あれは読み込むのが面倒だし読み込みのときに字や絵が曲がっちゃうし。)

切った後で読みたいと思ったときにも、やはり紙の本のほうが読みやすいと感じる。一度Kindleの実物を見せてもらったことがありますが、あれは本当に紙に字が書いてあるような落ち着いた表示で、とても読みやすそうでした。

pdfにした本は、上下の余白が邪魔だったり、字の大きさを調整すると1文を上から下まで表示できないせいでいちいち画面を上下に移動させる必要ができたりでちょっとめんどう。

余白を消すソフト:PDFDiet
http://smart-pda.net/software/PDFDiet/



PDFリーダーのほうでも、見開き表示で右から左へ表示させるように変えられたり、拡大、縮小とページ表示位置の移動、ページめくりを簡単にできるような(ショートカット駆使すればいけるかな?)やつだと使いやすそう。

英語読解ツールとして本当に欲しいもの

もうちょっと英語を読むのを楽にできるようにならないか・・・
ということで、1ページ内の英単語を一覧表示にしてくれるソフトがほしい。有料でならあってもよさそうなものだが・・・

今ではもう、英和辞典がネットで無料で利用でき、また意味を知りたい単語を選択(反転表示?)させれば数秒で英単語の意味を見ることができます。さらには機械翻訳もある。ずいぶん英語を読むのは楽になってはきているはず。

weblio ポップアップ英和辞典
https://chrome.google.com/webstore/detail/weblio%E3%83%9D%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97%E8%8B%B1%E5%92%8C%E8%BE%9E%E5%85%B8/oingodpdjohhkelnginmkagmkbplgema?hl=ja


しかし、ポップアップさせるのに1,2秒かかってしまう。その間別のところをクリックしたりすると当然ポップアップは消えてしまう。
また、機械翻訳はまだ発展途上なので完全ではない。

御伽噺を翻訳ソフトにかけたら、新次元の笑いが止まらなくなる
http://www.cafeglobe.com/2014/03/036715fairytale_remix.html

日本人の英語は(発音だけでなく)文章でもひどいとネットで書かれていることがありますが、その一部には機械翻訳をそのまま貼り付けて会話しようとした人の英文が関係しているのかもしれない
(または、日本人のニュース、ブログなどを機械翻訳し、それを掲示板に転載したところ、「日本人の英語ってひどい」と言われる結果になったとか)

しかし、長い英文を読む場合などにはとりあえず機械翻訳に通してみることもあります。
未成熟ながらも利用する理由のひとつに、一応日本語になってさえいれば、全体を俯瞰してみることができること。
もうひとつに、単語の意味を一度に調べられること。

わからない英単語がだいたいどの部分で出てくるかがわかれば、英単語の意味を知るために使うことができますので、ひとつひとつ単語を調べることなく英文を読み進めることができるようになります。


だったら、1ページ分の英単語を一覧表示にしてくれるだけでもいいんじゃないか?
と思った次第なのですが、現状そういうソフト、アドオンは無い様子?

最初は膨大な量が表示されたり、時間がかかってしまったりもするかもしれないものの、意味を知っている単語だったらチェックを入れることで今後は意味を表示しないようにできるようにすれば、だんだん表示される単語は減っていく。高校卒業水準などであらかじめフィルターをかければ最初からam やらpenやらが表示されることはない。

さらにこの機能を利用すれば語彙力を表示することもできる。

さらに、俗語や頭字語、イディオム(熟語)を表示してくれるとありがたい。
専門分野(化学、政治、中世ヨーロッパ風俗など)を指定すれば、その領域で使われる単語はその分野での読み方で出してくれるとか
(tubeを試験管と訳してくれたり、ただ会ったのではなく「会合を持った」と訳したり)

そのほか、Itが何を意味しているのかわからない時などに、Itを選択するとそこ以前の名詞をハイライト表示してくれるとか、読みやすくするための工夫は何かまだあるのではないかと思います。

機械翻訳の技術まで含めれば、パラグラフのはじめの文を抜き出し、概要を表示するとか、SVを予想して色分け表示するとか…


翻訳作業向けの「翻訳ツール」というものもあるけれど、これはこれで求めているものとはちょっと違う。

辞書サービスと連動させれば、画面右に英単語を表示させられるのだけれど、サービスが有料だったり設定がうまくできていないせいか、さほどうまくいかなかった。

また、英文を日本語訳で上書きしていくように書き進めるため、自分が一度訳してみた後は、元の英文を見ることができない仕組みの様子。しかしまた英文を読んで確認したいところ

翻訳ツールのもっとも重要な部分は、自分が翻訳した文章の中から過去の訳を探し出し、表記ゆれをなくす部分だという声もあります。

シュガーメイプルの森をサトウカエデの森が混じっていたり・・・とかそういうミスを減らせる。

Googleの翻訳ツールでは他の人が翻訳した履歴から翻訳の候補が表示されたりもするらしい?

このツールでは、なによりも時間がかかりすぎる。英文を読み込む手間もかかるし、読むだけなら一文一文をきれいな日本語に変えていく必要もないので。


2015年7月18日土曜日

おおかみこどもの雨と雪 語られない真実とかって何かあるのだろうか

おおかみこどもの雨と雪

うろ覚えで書くトンデモ回想。あれ、こんな話だっけレベル

この作品についての感想やら裏話やらをみていると、批判的?な意見として、花が母親の理想像として描かれているのが気持ち悪いとか、雪の独白の背景に語られない事実があるのでは?というものがあるようです。

思い返してみて、とてもがんばっている姿が印象的だったのでそこは悪くはないと思ったのですが(そもそも、アニメでくらい理想を押し付けてもいいでしょうに。子供に見せる話だと思うし)、私としては、むしろ「親としてあれでいいのか?」という部分もあったり。

また、ストーリーの形式的なもので、これは娘の雪の一人語りで描かれる伝聞形式の物語になっていますが、そのせいで、雪が知らない部分については詳しく描かれず、また花から嘘を教えられていたり、雪自身が隠していたりする部分があるのでは?とも受け取れるようです。

これは怪談話における「これは私の友達が実際に体験した話なんだけど」のような演出に似たものがあります。
雪の解説的な独白が入ることにより、今現在どこかで起こっている出来事を垣間見ているわけではなく、雪の記憶の中にある過去の思い出話を語り聞かされていることになり、作り話を聞かされている可能性さえあるという場面であると言えます。

もちろん実際にこれはフィクションですし、話の内容的にも現実味の無い話ではあります。
しかし、このようにワンクッションいれることにより、「作り話としての人狼の話を見ている」というよりも、「人狼に会ったことがあるとまじめに主張する人の話を聞いている」場面になり、このような見方をすると、話の内容がかえって現実味を帯びて感じられるように思いました。

雪が語らなかった部分として指摘されている部分が、主に自然へと帰っていった雨(弟)に関する描写が少ない点です。

・雨と動物園の狼が出会う場面
・雨とセンセイ(狐)の関係
・雨が家を出て行ていったその後のこと

このあたりは学校になじめず姉弟で行動を共にすることが少なくなったため、雪(姉)は雨(弟)の行動を全て見ていたわけではなく、おそらくは母から聞かされた内容を想像して描いているのだろうと分析している人がいました。実際、動物園のオオカミはわざわざ会いに行ったのに何も話をしてくれなかったように見えますし(実はここで何かを話していた?、雪は一度もセンセイ(狐)に会っていませんし、雨が家を出て行く場面というのも、雪は家にはおらず、雨が一人で家を出て行ってしまうことになります。出て行く前の会話などでも、雨と雪は別れを言っていない様子でした。(母さんと一緒にいてあげてよ・・・と言うのは、もう旅立ちを決意していたからでしょうか)

このような雨に関する描写の薄さの原因として、雪と雨の関係を不仲ととっていた人もいました。
喧嘩もしています。
このような描写の薄さ、曖昧さは監督(脚本?)の意図したものなのか・・・

コミックとしても3巻ほど出ている様子ですが、これは映画のメディアミックスのようなものであり、基本映画以外の部分が追加で描かれている様子などもないようです。

あとのことは想像するしかないですね。隠されているのでは?と言われると気になってしまうので色々考えてみました。しかし私は別に、監督が意図して何かを隠しているとも思ってはいません
あれはああいう話だったのだろうと。オオカミと人間の共存の難しさや、その中で母親として奮闘した人の姿を美しく描いたものなのだろうと思っています。

考えてみると謎が謎を呼ぶ・・・
以下に書いてあることは、私自身も本気では信じていないような内容なので、あまり本気にしないでください。

おおかみこどもというよりオオカミ少女
疑いはじめるとなると、まず疑わしきは語り手である雪になります。オオカミが来たぞ!と叫ぶ少年よろしく全ては嘘なんじゃないかとさえ思えます。そこまで言ったら元も子もないですが、語り手を疑うというのはそういうことになりますよね。

なぜ、最後に突然田舎を出て寮で生活することにしたのか・・・中学、高校は寮つきの学校しかなかったんだっけ?なにやら唐突な展開な気がしました。

重箱の隅をつつくような話をすると、雨があったセンセイ(狐)というものは実在するのか。かつて山を走り回っていた雪は一度も出会うことがなかったのだろうか


もっと怪しいのは花(母)
話の中心となっている人物は語り手の雪というより母親の花ですね。
雪から見た花という存在が、理想的すぎてうそ臭いというような、感情移入できないというような意見をちらっと見ました。
さして長々と不満を並べているわけでもなかったと思うので、ひょっとしたら「なんか花って視聴者から嫌われてそうだよね。ううん、知らないけど絶対そう」くらいの実体の無い評価なのかもしれません。

母の行動として理解できなかったのが、子供がいなくなった後でさえも田舎の家に住み続けたことです。一度文明になれた現代人が田舎で暮らし続けるのは大変だろうと、しかも女手ひとつでトラクターも使わず農業とは・・・

子供がオオカミに変身してしまうことを隠すために田舎に移り住んだのが主な理由であったはずなので、子供が独り立ち(雨は山の中へ、雪は正体をばらす心配もなくなった年頃)した後なら、実家にでも帰れば良いのではと思ったものでした。

作り手側が自然より、文明否定の立場にいるせいかもしれませんが、花の田舎暮らし継続は少々うそ臭く見えました。
花は中学生の雪からは美化されて描かれているかもしれない。しかし、もともと社会に馴染めず弾き出された存在なのかもしれない・・・と感じました。

実際のところ、雨が帰ってくる(顔を出す)のを待っているというのが妥当なところなのでしょうが、考察中はちょっと思い至らなかった。それに思い至るまでに私の花への疑惑はどんどん深まっていき・・・

父親(狼)は生きているのではないか?
姉弟に全く記憶に残らない存在であり、これは家族を捨てていった、または事情があって分かれた父親のことを、子供たちには死んだと嘘を教え込んでいるということではないだろうか?
反証として、花が運転免許を持ち続けていることやら(戸籍もないのにどうやって取ったんだ)、子供を育てるための資金として父親の貯金(かなりの額がなきゃ10年も子供2人を育てられまい)などがありますので、ここに隠し設定などはないでしょう。追求するのは野暮というもの。
死体の無い父の葬式をどうやったんだろう?と後になって思った。

雨(弟)が家を出るまでの真実(憶測)
雨は学校になじめず、一度川でおぼれかけたあたりから変わり始めたと雪(姉)は言い、センセイ(狐)と共に山を駆け巡るようになり、やがて山の主としての立場を狐から受け継ぐべく自然へと帰っていく・・・

しかし、雪が知っているのは家に帰ってきたらもう家出した後で、母親が泥だらけ傷だらけで待っていたというところ。
真相は、

学校になじめない男の子が姉と喧嘩しがちになり、母親にDVしたりした挙句に家出して行方不明

であってももおかしくはない。
姉弟の家での会話も、
弟「姉さん、人の真似なんてしたって無駄さ。僕らはやっぱり狼なんだ」
姉「私はちゃんと人として暮らせる。バカなこと言ってないであんたもちゃんと学校に来な」

という具合で、あまり山や自然を肯定していたわけでもなく文明、人間社会への否定しか述べていなかった気がします。弟は自然に惹かれていったというよりも、単に社会に適応できなかっただけではないか。そしてそれは母にも関係しています。

センセイの怪我は、つまるところ自然の脅威にさらされたからであり、人間はその自然の脅威に立ち向かうために家や畑や機械を作っていったわけです。母親はあの場面で「自然を守るための勉強をして、この山以外ももっと多くの自然を守れる人になって」と言って諭すこともできたのではないか。
動物的な巣立ち、親離れとして描いているのかもしれません。

これがハッピーエンドというわけではなく、姉弟の人(狼)生は今後も続いていきます。2つのアイデンティティを持つ子供が、それぞれ別の進路へ進むところまでを描くことで、この物語の背景に存在する問題・・・自然(狼)と人間の共存の難しさを考えさせるための終わりだったのだろうと思います。


いろいろ書きましたが、自然と文明の共存などは好きなテーマですし、一人前のオオカミとして山へ戻っていった雨の堂々とした姿や、雪も人間社会で上手くやっていけそうな分別を得るまでに成長できたこと、秘密を知っても受け入れてくれる人に出会えたこと(中学は一緒じゃないのか?)、そこまでがんばって2人を育てた花、ついでに閉鎖的でありながらも身内にはとことん親身になって接してくれる村人など、温かい話でした。

自然と文明の共存・・・というと、もはや安易に文明を手放すわけにはいきませんが。生活が不便というだけでなく、今の世界の人口を支えるためにも機械やエネルギーは必要不可欠です。文明が行き詰るということはすなわちひどい数の人間が飢えや貧困の中で死ぬことになります。
近年産業界で言われている言葉でいうと「持続可能な経済成長」というやつを目指していくことにはなりますが、果たして人類の滅亡がどのような形で訪れるものやら・・・

2015年6月28日日曜日

嫌韓ネトウヨが望む日本史は真実か

これは偏見を助長するためのものではなく、ネットの噂を批判的な目で見て検証しようという立場からの記事のつもり

・ネットの噂の真偽
以下、嫌韓な人が好むテーマとして
・日本人は朝鮮半島を経由せずに日本列島に至った
・稲作の伝来を伝えたのは朝鮮民族ではない
・現代の朝鮮民族に歴史的に恩は一切ない。彼らはシベリアの少数民族エベンキである。

などがあり、このあたりを見ていきます。嘘っぽい部分もあるので色を薄めに書いておきます。

Y-DNAは万能ではない点も含めて理解してほしいので、その点、前の記事も見ておいてほしい。

・日本人の渡航経路は朝鮮半島経由。ただし朝鮮民族ではない
まず、日本列島に人が到着するにはいくつかの経路があります。
・北方経路(サハリン経由で北から)
・朝鮮半島経路
・南方海流説(東南アジアから海流にのって)

代表的なものはこの3つでしょうか。

・北方経路
主要な移動経路としてはあまり重要視されていないが、バイカル湖付近には先進的な石器文化があったらしく、古い土器も見つかっている。このあたりを中心として石器の流通を見ることができ、その中にはサハリン経由で北海道に至へ、さらに東北地方へ至っていた例がゼロではないらしい。ただし、日本人の祖の大部分が北から来たわけではないようです。
(ただし、この石器の記述はゴッドハンドの捏造が暴かれる前に書かれた本のものを参考にしてあったり…)

・南方海流説
朝鮮半島を経由しないことからネットでは人気の説であるものの、本の中では見かけない説。2005年ほどの本なので、近年の科学的分析の結果として勢いを得ている説の可能性もあるので、古代人の造船技術、航行術の解明とあわせ、今後に期待したい。
 古代の小さな舟で遭難した後に日本に流れ着いた人もいたかもしれません。しかし、男女両方が多数まとまって遭難することもないだろうし、航行技術的に、狙って日本列島に向けて漕ぎ出したと考えるのは少々無鉄砲に思えてしまいます。
(古代人の交流範囲は予想以上に広いのかもしれない。縄文人を「ひとつの場所から動かず、その日暮ししか考えられなかった原始人」と考えることはできず、日本国内でいえば、四国産の石をつかった石器が新潟で発見されるくらいには動き回っていたことが知られています)

マレーシア人「日本人の祖先である縄文人はマレー人だったって本当?」縄文人のルーツに対するマレーシア人の反応
南方渡来説…というには情報少ない

ということで、
朝鮮半島経路説
が有力(2005年当時)。
こう言うと嫌韓感情が刺激される人もいるでしょうし、これにより韓国人が喜んで「日本人の祖先は韓国人」と主張したりするかもしれないですが、だからといって、「日本人の祖は朝鮮半島出身(朝鮮民族)」とはなりません。

日本人のY-DNAハプログループを見ると、多くはD1b(旧D2、研究初期ではD-M64.1)とO2b1a(47z)になる。
D1bが縄文系であり、O2b1aが弥生系と考えられているようです。

D1b(wikipedia)
D1bは日本でしか見られないらしく、日本で発生した(分化した)と考えられているようです。

一度バイカル湖まで北上した後に樺太経由で日本に来た可能性もあるものの、おそらくは氷河期に海がかなり狭まっていた(それでも完全に陸続きにはなっていなかったものの)朝鮮半島から日本列島へ移動したと考えられている様子。

チベット系D1a(チベット、中国少数民族、朝鮮民族の一部)は、D1bとはどちらかが祖となっている関係ではなく、共通の祖から枝分かれした別の遺伝子のようです。したがって、朝鮮半島のD1a系の一部が日本に渡ってD1bに変化したわけではなく、また日本統治時に日本のD1b系が朝鮮半島に残ったわけでもない。
近年、D1a,D1bの共通の祖となるDNAを持ったD1系がアンダマン諸島の一部族から見つかったそうです。

ハプログループD(wikipedia)
>オンゲ族、ジャラワ族はD1a,D1bとは異なるD系100%

日本列島内にD系の祖が残っていないのは、列島内で淘汰されたから?
または列島に渡る前にD1bに別れ、大陸に残ったD1bは他のD系とともに淘汰されたか。

・O2b1a系
O2b1a(wikipedia)

こちらは日本、韓国に両方に分布し、弥生系の遺伝子であると言われます。
そして、このO2系DNAは揚子江流域で稲作文化(水稲)を発展させた人種であるようです。弥生人が日本に稲作(水稲)を伝えたという考え方と合致します。
これは朝鮮民族が日本に稲作を伝えた根拠だ!というより、上に書いたとおり揚子江文明の担い手であり、日本の稲作(水稲)の起源は揚子江(長江)流域にあります。しかし、気候変動などで移動を開始した黄河系のO3系の勢力に押され、中国本土ではO3が支配的になり、O2系は南へと(華南や東南アジア)へ追いやられたことがY-DNAから理解できます。

このO2系は中国東部の海岸線を北上し、朝鮮半島へ至り、そこから日本列島に渡ったと考えられるそうです。朝鮮半島にもO2bはいるけど、O3のほうが主流という中国黄河系の影響を強く受けた構成。

いつ、どこでO2系の中からO2b1へと分化したのかが気になるところです。
英語版wikipediaのO2b1a系を見てみると、Japan Originと書かれています。どうも、O2b1aの分布を見た場合、一度日本に渡って、そこから交流のある地域に分布していったと考えられる(O2b1aの分布の中心となる場所、分布の集中度合を見ると日本を起点として考えたほうがいい?)らしい。

つまり、可能性としては朝鮮半島⇔日本列島の人の移動は決して一方通行である根拠はなく、朝鮮半島のO2b1も日本列島から朝鮮半島へと戻っていった人が繁栄した形跡という考え方もできなくはない。…まあこのJapan origin説もまだ検証が必要だとは思いますが。

そのほかの資料によるとO2b1の発生、繁栄の中心地として日本か朝鮮半島南西部という百済の位置が起点ではないかと書かれているものも。私も百済なのではないか?と思いました。素人判断ですが。日本が起点であったとして、アジアでのO2b1a系の分布範囲でD1bの遺伝子が見られないらしいことが気になったためです。日本でオリジナルの遺伝子に変質するまで長期間定着し、そこを起点として分布したというならD系も同じ地域へ分布するのではないか?と。
(O2b1aが日本から出て行くことを選んだ段階でD1bとの混血は進んでいなかった可能性もあり、インドネシア、ベトナム、満州などへO2b1が旅立つ前、D1bとは対立、反目状態のような交流が絶たれた状態にあった?)

百済系は日本とつながりが深く、藤原氏が百済人じゃないかとか、そこらの藤原さん(詳細不明)のハプロタイプを調べたらO2系だったとか聞きます。
また、かつて百済であった地域でに相当する場所は現代では全羅道と呼ばれる地域とある程度重なっていて、何か歴史的経緯やら差別されているらしいですね。また、やや親日的立場な人が多いらしく、その件でも全羅道に非国民的な視線を向ける人もいるのだとか。


・稲作の伝来経路は朝鮮半島ではない?
この問題については、ひとつに縄文時代の地層(縄文土器の中から?)陸稲のプラントオパールが見つかっていることから、弥生系による水稲伝来以前に陸稲が存在したというものです。しかし、そのプラントオパールの量については資料によって大量ともごく少量ともいわれ、また現代の水稲の普及度合から考えてもいずれ水稲が主流になったことは間違いありません。やはり、水稲が入ったことは日本人の生活に大きな影響を与えたことでしょう。
 そして水稲の伝来経路はやはり朝鮮半島経由と考えられてはいます。しかしこのとき、持ち込まれた水稲の種類が少ないことから、水稲を運んだ人は極少数(陸地には10種くらいの稲(遺伝子的な差?)があり、日本に根付いたのはそのうち2種類程度らしい)との説もあるようです。また、鉄器が伝わった時期とは異なっているとも。
ミトコンドリアDNAにつよく影響を与えている以上、日本には結構な数の弥生系移民がいるはずで、鉄器(とその製造についての専門技術)はともかく食糧について手ぶらとは考えにくく、稲が2種類のみに限定されるのは不思議な話らしい。移民が本格化した時期よりも前に、日本列島で急速に水稲が広がっており、後から来た弥生系移民の米がタネモミとして蒔かれることはなかった…とかでしょうか。
 陸稲が普及していたことも踏まえ、日本人が自主的に水稲を持ち込んだ可能性もゼロではないのではないか。
…しかし、弥生系移民の起源が揚子江流域に定着したO2系であることと、弥生系の移民が増えた時期に水稲が伝わったことが偶然とは思えない。

まあ、この問題についてはまだ難しい点がありそう。2005年当時の研究結果からは先に進んでいるかもしれないですが。
ただ、日本に稲作を教えたのは韓国!と無駄に勝ち誇られたら、「日本には縄文時代から陸稲があったし、水稲は揚子江文明で発達したもの」と答えておけばいいでしょう。


・朝鮮民族はシベリア東部の少数民族エベンキである?
この仮説もエベンキ族のY-DNAハプログループやらmtDNAを調べれば少しは関係性が見えてくるかもしれません。しかし、エベンキ族のハプログループの情報が見つからない(調査されていない?)ことと、朝鮮民族はハプログループでいうと普通に中国黄河文明系のO3が強いことなどから、シベリアのエベンキ族とは別の分布になりそうな気がします。(シベリア系であればCやDが強くでるはず?)

また、エベンキ族とは別に朝鮮民族と日本人の関係について関わる説として、
・10世紀、朝鮮半島の白頭山で大規模な噴火があり朝鮮半島の住民は滅亡した
・7世紀ごろの百済、高麗、新羅の戦争は異民族同士の戦争であり、勝利した新羅は百済、高麗とは別の民族

など、古代朝鮮民族(百済、高麗系)と現代の朝鮮民族(新羅系?または火山噴火後の民族)は別の民族であるという説があります。

このウワサの真偽はともあれ、朝鮮半島のほうが広く多くの民族との混血は起こりやすいことは確かで、現代の日本人とは異なるDNAを持っていることはなんら不思議ではない。

火山については、前の記事にミトコンドリアDNAについて「大和系mtDNAはアイヌ系DNAと朝鮮民族のDNAの両方の特徴を持つ」と書いたのですが、このことが正しいなら、少なくとも弥生系の渡来のあとで全住人滅亡で民族総入れ替えにはなっていないはず。


とはいえ、朝鮮半島の百済、高麗、新羅らの民族的な伝承では、彼らの起源について、それぞれ「北からやってきた」とのみ書かれているため区別がつきにくい。別の民族という根拠もないです。しかし、特に百済については、中国の記録に「支配階級と被支配階級では言葉が違う(別の民族である)」と記されていたりと何やら複雑な様子です。新羅の勝利後、それまで特に関係の強かった百済のほかに高麗からも日本への亡命者がでています。

新羅系が別民族であり、百済、高麗の土地を奪い取って支配したということなら、mtDNAはそのまま残り、Y-DNAについてはO2b1は少数だけ残ったとして、それは百済系の生き残りであると考えれば結構理にかなっているかもしれません。

・日本人は○○と違う民族か。最も近い民族はどこにいるか
蒙古斑が出る。蒙古ひだがある。酒が飲めない…
日本人はまちがいなくモンゴロイドの特徴を持つ人が多い民族であり、世界的に見ればモンゴロイドであることは間違いありません。

顔立ちについても個別に見ていけば漢民族系、朝鮮民族系、東南アジア系(あだ名がネパールやグンマーだったりする人)などもいるでしょう。私の知人にも「外国行った時、ベトナム系?って聞かれた」という人もいました。

中国の少数民族の中ではイ族などが顔立ちが近いといわれ、彼らはY-DNAで見てもD系の遺伝子を強く持っているそうです。

海外の反応「えっ、日本人って自分たちが他のアジア人と違うって信じてるの?」
日本人からすれば、日本人と中国人を見分けるより、(二択にしてもらえたとしても)ヨーロッパの人をみて国籍を見分けるほうが難しいと感じます。日本人に欧米人の顔は見分けられず、欧米人にもアジア人の顔は見分けづらい。

ヨーロッパでは、海外の反応などのサイトを見ているとゲルマン系、ラテン系、スラブ系、ユダヤ系・・・と、さらには歴史的な関係などで民族、人種的な違いを意識しているコメントは多い。
「ドイツ人とフランス人見分けられないとかありえないだろ!」というのが当のドイツ、フランスの人の常識。


Y-DNAの限界として、一重まぶたの件も挙げましたが、Y-DNAだけでは他民族との類似点、相違点をすべて説明することはできません。しかし、違いがある理由については若干感じ取れました。
mtDNAで見ても中国、韓国とも違いは確かにあり、Y-DNAについては驚くほどの違いがあったといえます。

mtDNAがもっとも近いのは韓国ということは確かであるものの、これはだいたい、東アジアに住み始めた時期が同じくらいというような意味と考えられるのではないでしょうか。

 さて、日本人は本当に他のアジア人と同じじゃ嫌だと考えているのか?…別にそういうわけでもないと思います。ただ、最近は気になる事情があるので仕方ないことかと。
今は韓国側が起源やら何やら主張していることに加え、それを聞いた外国人が「日本も韓国も同じ民族なんだし、スシも剣道も韓国起源で問題ないだろ?」という反応をしてしまうためにこの問題について少々ナーバスになってしまった人もいると思います。

youtubeなんかで顔見分けクイズもありますし、いずれ文化的な違いなどについても理解してもらえる日がくることを願いましょう。

Y染色体ハプログループでどこまで分かるのか?日本人の起源など

Y染色体(Y-DNA)ハプログループというものがなかなかに興味深いです。日本人の起源に迫っています。
2015年3月版ハプロタイプツリー

これはY染色体の遺伝を追いかけることで、人類の移動を探ったりすることができるというもので、

・日本にはD型という古い遺伝子が生き残っている
・沖縄とアイヌは遺伝的に近いことが証明された
・アジア全土、東ヨーロッパでもチンギスハンの遺伝子がいまだ息づいている

などと言う形で耳にしたことがあるはずです。


このことについて、嫌韓(≠ネトウヨ。一部重なる部分もあるが同じではない)な人々が取り上げることがあります。

・韓国人の持つハプロタイプとは構成の割合が大きく違うため、日本人と韓国人は同質の民族ではない
・日本の大半は韓国とは無縁のD型遺伝子を持っている
・天皇はD型遺伝子を持ち、韓国系とは無縁であることが証明された

など。
これらの話はどこまで本当か、そしてY-DNAは嫌韓にとって有利な情報となるか……


ネットや図書館で調べてみました。まずはY-DNAについて。上記ネットの噂については別の記事で。
なお、この記事は2015年の最新の研究を反映したものではありません

近年日本人に多く含まれるOb2系もK系として再編されるなど、日進月歩で変化している分野のようです。私が知ることができたのは2005年あたりの本などに書かれた内容を図書館で拾い読みした程度だったりします。

・Y染色体ハプログループでわかること
Y染色体は男が持つ性染色体のことであり、男親から男子へ伝わります。この伝わり方により、男親の出自が変われば子供たちのY-DNAもがらりと変わっていくことになり、つまり戦争での勝者のY-DNAが極めて有利になっていくことが考えられます。チンギスハン(モンゴル系)の遺伝子が広く伝わり、現在でも残っているというのはそういう理由があります。
 逆に、日本やチベットの山奥にのみD系が残った点については、そのほかの地域では後進の遺伝子のO2、O3などと戦争が起こり、敗北した結果、D系の男性は多くが殺され、また子孫を残すことが許されない身分に押し込められたことが考えられます。それに対して、日本は侵略を受けず、また一定の割合でD系とO2系の遺伝子が共存することは、お互いに侵略することなく共存関係をとったことが予想されます。このことから、D型の遺伝子を縄文人、O2型の遺伝子を弥生人と考えると、縄文人と弥生人は共存して日本人の祖となったと考えることができるようです。私の子供の頃は、「縄文人は弥生人に破れ、(大和系)日本人の祖先の弥生系が繁栄した。やや我々と顔立ちの異なるアイヌは縄文人の末裔かもしれない」という説が唱えられていましたが、アイヌが縄文系の遺伝子(Y-DNAハプロタイプD1b(旧D2,D-M64.1)を色濃く残していることは正しかったものの、弥生人が縄文人を追い払ったという説は科学的に否定されることとなりました。

・mtDNAハプログループとの関係
こちらはパラサイトイブで知られるように女系で伝わり、Y-DNAに比べて長い時間で変化しにくい特徴を持っています。
 日本の本土に分布するmtDNAはアイヌのmtDNAと朝鮮半島のmtDNAの両方の特徴を持つらしく、これはつまり本土の大和人は縄文人と弥生人の血が混ざっているということで、また朝鮮半島のmtDNAは3000年日本に渡った弥生人とさほど変化していないと言えるようです。

父系、母系で、この2つだけで十分というわけでもないですが、異なる特徴を持つ遺伝子情報として両方を見比べていく必要があるようです。(Y-DNAのほうが新しく出てきた手法であるが、だからといってmtDNAが不要になったわけでもない)


・Y染色体ハプログループは万能ではない
Y-DNAだけで人の遺伝の全てを知ることはできません。特に一重まぶたなどについて気になる女性は自分の遺伝について縄文系、弥生系に興味を持つかもしれません。縄文が二重、弥生が一重などと言われますが、女性に関してはこの方法で縄文、弥生を問うのは難しい。
 なぜなら、その女性当人はY染色体(男の性染色体)を持たないからです。父親のDNAで判断することもできますが、その女性に子供ができた場合、その目元に女性側の遺伝がないわけではありません。Y-DNAと一重まぶたの分布が一致しているわけではないのです。

ヨーロッパではR系あり、細かく分布を調べられ、ヨーロッパ内での人の移動、それぞれの祖先の分析に熱心に調べられているそうです。しかし、O系も含め、ヨーロッパのR系も遺伝子の伝達経路詳細の違いはあれど、大枠では違いが少ないらしく、O系もR系もまとめてK系として再編されるのだそうです。
 これは彫りの深い二重まぶたの縄文系よりものっぺりした顔の一重の弥生系のほうがヨーロッパ人に近いことになってしまい、このことを見ても、Y-DNAだけでは遺伝の全てを分類できないことが確認できます。
ミトコンドリアハプログループ、そのほかさまざまな要素を検討していかなければ、日本人の人種的特長を説明、分類することはできない様子です。


・日本人の起源とは……縄文弥生二重構造モデル
日本人のY染色体ハプログループを見ると、多くはD1b(旧D2、研究初期ではD-M64.1)とO2b1a(47z)になる。
D1bが縄文系であり、O2b1aが弥生系と考えられているようです。
他にも多数の要素を含んでおり、縄文、弥生が共存した「日本人二重構造モデル」を形成しつつ、他のさまざまなY-DNAが共存している。
上記のY-DNAの詳しいツリーを表示してくれている人によれば、異なる時代にアフリカを出た2つの人種(?)が共存しているという先進国では珍しい構成のようです。

D1b(wikipedia)
D1bは日本でしか見られないらしく、日本で発生した(分化した)と考えられているようです。アイヌ以外でも、東日本では4割ほどを占めるとか。

一度バイカル湖まで北上した後に樺太経由で日本に来た可能性もあるものの、おそらくは氷河期に海がかなり狭まっていた(それでも完全に陸続きにはなっていなかったものの)朝鮮半島から日本列島へ移動したと考えられている様子。

チベット系D1a(チベット、中国少数民族、朝鮮民族の一部)は、D1bとはどちらかが祖となっている関係ではなく、共通の祖から枝分かれした別の遺伝子のようです。したがって、朝鮮半島のD1a系の一部が日本に渡ったわけではなく、また日本統治時に日本のD1b系が朝鮮半島に残ったわけでもない。
近年、D1a,D1bの共通の祖となるDNAを持ったD1系がアンダマン諸島の一部族から見つかったそうです。

ハプログループD(wikipedia)
オンゲ族、ジャラワ族はD1a,D1bとは異なるD系100%
また、上記のwikipedia記事によれば、日本人の由来などについて本を書いたり、実際に研究を行って論文を書いていたりする崎谷満氏は日本語の起源をハプロタイプDがSOV文型の担い手であったと考えている様子です。

英語のほか、大陸で広がっている中国語などはSVOであるため、日本語の元(近い言語)はどこにあるのか、朝鮮語以外とのつながりが見られなかったのですが、中国語が黄河系の言語として後から繁栄したもので、インドのサンスクリット語、チベット語、ミャンマー語などむしろSOV系としてのつながりがある言語は(D系の移動経路を考えると)結構多く存在していそうです。
SOV文型の言語(Yahoo知恵袋) 


ジャラワ族が日本人と近い。海外の反応

念のため書いておくと、アンダマン諸島が日本人のふるさとと言いたいわけではない。
D系の遺伝子のうち一部が未変化のままアンダマン諸島に渡ったと考えられ、一部チベット等内陸部でD1aに分化したものもまたアンダマン諸島へ渡った。
D系の遺伝子のうち、一部の未変化のものが日本列島へ渡り、渡った後でD1bという日本固有の遺伝子に変化し、日本で広く分布した……ということのよう。
 D1bが日本にしかいないことから、D1bが日本国内で発生したと考えるならば、少ないながらもD1bのプロトタイプとなる遺伝子があってもよさそうなのですが・・・それは日本列島内で競争の末に淘汰されたのかな?それとも日本に渡る前にD1bに変化し、大陸に残ったD1bとそのプロトタイプは既に滅びたと考えたほうが分かりやすい気もしますが……

・O2b1a系
O2b1a(wikipedia)
こちらは韓国にも一部分布し、弥生系の遺伝子であると言われます。
そして、このO2系DNAは揚子江流域で稲作文化(水稲)を発展させた人種であるようです。弥生人が日本に稲作(水稲)を伝えたという考え方と合致します。
漠然と、大陸のどこかの気まぐれな人が日本にくるとき稲を持ち込んだのかとも思っていましたが、上に書いたとおりO2系は揚子江文明の担い手であり、日本の稲作(水稲)の起源は揚子江(長江)流域にあります。しかし、気候変動などで移動を開始した黄河系のO3系の勢力に押されて、揚子江流域の人々も別の土地へと移動することになったと考えられます。中国本土ではO3が支配的になり、弥生人の祖先O2系は中国南部、東南アジアへと逃れていったことがY-DNAから裏付けられてきています。


・天皇家は朝鮮半島に存在しないD1b系?
天皇陛下の目が細いから朝鮮系と呼ぶ人もいる(小学校の先生もそう言ってた)のですが、明治天皇、大正天皇、昭和天皇を見るとそうでもない感じ。
遺伝の全てがY-DNAと一致するわけでもないのだけれど、天皇陛下の目の特徴などで天皇家の起源を朝鮮系という人がたまにいる。

しかし、天皇家のY-DNAはなかなかに興味を誘います。
天皇家は男系で皇位を継承してきたわけなので、その原則に従えば今上天皇のY-DNAは2000年前の神武天皇のY-DNAなわけです。清和天皇を祖とし、武家という男社会で生きてきた源氏などの血筋も、同じことが言えるのではないか。

また、このこととチンギスハンの遺伝子がC2b2(C-M217)と推定されることで、これで源義経がチンギスハンになったという説(もちろんトンデモ説であり、外国からの侵略を日本国内の事情のみで解釈しようとした昔の日本人の思い込みが元なんでしょうけど)に科学的根拠がついたと思ったのですが、天皇家のY-DNAがD1bであるか分かっていないようです。


上のY-DNAハプロタイプの情報を多く示してくれている人はO3系(黄河文明を祖とする、本土中国系)と予想しているようですが。
また、チンギスハンの遺伝子も、東ヨーロッパを含め広く分布しているY-DNAをチンギスハンと仮定しているだけという面もある様子。
 O3系と考えている理由には日本を平定する武力、好戦性を広くアジアを支配した新人類であるO系に求めたためのようですが、これは一時期大和朝廷の起源として武力で支配域を一気に拡大したという考え方に近いものといえるかもしれない。
騎馬民族征服王朝説
手塚治虫の火の鳥でも、大和朝廷(神武天皇)は卑弥呼の邪馬台国(邪馬壱国)を武力で制圧して勢力を広げていく場面がありました。しかし、どうも大和朝廷が勢力を拡大する段階では天皇家の政治的権力、発言力は小さかった模様。この騎馬民族征服説は現在では否定されている様子です。ただ、武力による制圧も全くなかったわけではないはずで、大和武尊や吉備津彦命などは異民族の征伐を行っている。

天皇家のY-DNAを調べるとなると、遺髪などからDNAを比較することで男系を継続しているか、政争の結果、別の血統に入れ替わっているのではないかとか、さらには代々の中での子供のすり替えみたいなものまで明らかになってしまうので、少々デリケートな問題にもなりえます。
 世界最古の王朝であることに加え、男系を継続してきたことも含め、気になるところではあるのですけれど。

2015年3月1日日曜日

心のふるさとへふるさと納税

ふるさと納税の「お返し」が話題です。

加賀市:DMMポイントで50%還元
http://www.dmm.com/furusato/
飯山市:iiyamaのモニターが2000円の自己負担で(リターン60%~70%)
http://www.city.iiyama.nagano.jp/soshiki/kikakuzaisei/jyohokanri/ouen.htm
http://www.city.iiyama.nagano.jp/assets/files/kikakuzaisei/ouen/tokutenH27.2.24.pdf

リターンが同じく6割ほどにもなるタブレットPCが人気のようで、現在品切れ中。
4月以降再開予定とのこと。


複数の自治体に寄付しても、その寄付の総額に対し自己負担が2千円になるので、飯山市とかで大物をもらって、残りをDMMポイントみたいなところで消化し切れれば…と思っても、
どうやらDMMポイントは3月末までのよう。

換金性の高いお礼が問題視されてきているようで、加賀市の場合は、その騒動にむしろ影響をうけて最後に滑り込んでみた形でしょうか。

2000円で750万円の土地をゲット!?
http://diamond.jp/articles/-/61216?page=2

ふるさと納税の高額返礼品は3月31日までに申し込むべき理由
http://manetatsu.com/2015/02/40830/

実際に「ふるさと納税」して「DMMマネー」をもらってみた!
http://diamond.jp/articles/-/66847

たいていは2万円以上で感謝の品1つ・・・と、控除枠に端数が出てしまってもその余った分だけで何かがもらえるわけでもないのですが、余った分をDMMポイントみたいなところに投入して使い切ってしまえるとうれしい。
(むしろ、端数となった金額を全国から集めることができれば、それだけでも結構な額が集まると思う)

さて、自分がどれだけの寄付可能な枠を持っているのかを知ろうと思ったのですが、

ふるさと納税応援サイト 税金控除額シミュレーター
http://www.furusato-nouzei.jp/guide/simulator.html

CityDo ふるさと納税 計算シミュレーション
http://www.citydo.com/furusato/what/07.html

さとふる 控除シミュレーション
http://www.satofull.jp/static/calculation.php

総務省 控除額シミュレーション用のエクセルシートあり
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/080430_2_kojin.html

微妙に違うのが気になったので、どういう計算をしているのか調べてみた。

計算方法
http://www.citydo.com/furusato/what/01.html


ふるさと納税の上限は、
特例控除=(寄附金-2000円)×(90%-「所得税の限界税率」×(1+0.021))
になるケースとのことで、
「所得税の限界税率」(所得割額を出し、そのときに適用された税率)、特別控除の数字を求めた上で
寄付金の上限=特例控除/(0.9-所得税の限界税率*1.021) +2000
を計算することになる。

特例控除と書かれている部分は、
特例控除= (個人住民税所得割額)×10%
として計算できるので、この個人住民税所得割額というのは、住民税のうち所得に比例する金額で、


所得税・住民税簡易計算機
http://www.zeikin5.com/calc/
上のページの
課税所得(住民税)に住民税率(地域ごとに違う?または全国一律で10%)をかけて出せる数字です。
このページで金額を変えながら控除の合計などを見ていると、数字同士の関係が見えてわかりやすかったです。

まず、課税所得を計算すると、
給与所得-各種控除-基礎控除(一律33万円)
で求められる金額になる。

上の式に出てきた言葉をそれぞれ源泉徴収票などと比較すると、
・給与所得:源泉徴収票では「給与所得控除後の金額」にあたる。
これは、給与収入(税引き前の給与。源泉徴収票の支払い総額。いわゆる額面○○円というやつ)から、その金額に対応する給与所得控除を引いて計算している。

給与所得控除の計算
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1410.htm

各種控除
・社会保険費控除等:源泉徴収票に書いてある。会社に納めた健康、厚生保険のお金がそのまま控除される。
・扶養控除:家族の人数に応じて税金が控除される。
・配偶者控除:配偶者の所得を税金がかからない程度に調整することでお得になることが。(勤め先で考慮してくれてるはず)
・医療控除:治療費が10万円くらいかかった場合に、治療費が返ってくる感じ。
・生命保険費控除:任意で入っている生命保険から控除される。
・地震保険料控除:地震保険に入っていると



社会保険費(協会けんぽ)
http://www.sharoushi-houjin.com/index.php?id=92

生命保険費控除
http://www.jili.or.jp/knows_learns/basic/tax/premium.html
所得税への控除、住民税への控除があるが、ここでは住民税のほうを適用する。(旧制度で最大35000円、新制度で最大28000円)

・基礎控除
年収、年齢に関わらず33万円
(所得税を計算するための課税所得を求める際には、基礎控除の額は38万円)

これで課税所得(住民税)もしくは個人住民税所得割額が出せる。
上記の式で計算して、千円以下は切り捨て(エクセルではRounddown(A1;-3)で切り捨て計算できる。)

この課税所得(住民税)にのその地域の市民県民税率(合わせてだいたい10%)をかけると住民税のうちの所得割というものが出る。これが個人住民税所得割額になる。住民税については、これのほかに市民全員均一額の均等割などを足して住民税を出す。くわしくは各自治体で。

このほか、「所得税の限界税率」を知る必要があるので、所得税についても計算する。

「所得税の限界税率」は、いわゆる累進課税の税率のことのようで、
http://www.zeikin5.com/calc/
このサイトでいうところの課税所得(所得税)の額から決まる税率になる
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm
ここでいう「課税される所得金額」、または課税所得(所得税)は、
給与所得-各種控除-基礎控除(一律38万円)
で求められる。
上の住民税計算時の数字と同じものもあるし(社会保険費控除、医療費控除)、違うものもある(扶養控除、配偶者控除、生命保険費控除、地震保険控除)

これで得られた課税所得(所得税)に対応している税率(5~45%)をかけたものから、控除額をひいたものが所得税になる。
・・・のですが、今回知りたいのは税率(所得税の限界税率)のほうでしたね。

寄付金の上限=特例控除/(0.9-所得税の限界税率*1.021)+2000
に、特例控除= (個人住民税所得割額)×10% と、所得税の限界税率を入れることで、寄付可能な金額が分かります。
1.021の部分は、1:所得税と、0.021:復興特別所得税の合計になります。


ふるさと納税を行うにあたって、注意したほうがよさそうな点としては、

・収入は2015年1月から12月の金額で計算すること(ボーナス含む)
・次の年(2016年)2月ごろ確定申告をしないとお金は全く戻ってこない(税金の還付の申請は5年以内…ではないらしい?)
・お金が完全にもどるのはさらに1年半ほど後(2017年5月ごろ完了)
・現在、還付可能な枠を2倍に、確定申告不要な形に変えようと税制改正大綱が出されていて、ほぼ確定ながら詳細未定


税金は12月締めなので、年度(4月~次の年の3月)ではない。今年(2015年1月から12月)納税したぶんは来年2月に確定申告時に適用される。
なので、2000円の自己負担でギリギリまでもらおうとするなら、2015年の12月にボーナスをもいくらもらえるかが分かってからということになるでしょう。
さらに、現在1年に寄付できる金額の上限を2倍(課税所得(地方税)×20%)に拡充することが検討されているようで、これが1-3月の分にも適用されるのか、また土壇場で枠2倍の話が消えないとも限らないので3月末までに加賀市にボーナス期待含めて20%いっぱいに納税してしまうのは危険な様子。

また、確定申告不要になるのは4月以降に納税した分からになるそうです。しかし4月にはDMMポイントで還元する方法は終了している見込み。

確定申告をしないと、わざわざ余分に納税し、その約半額をDMMポイントとして返してもらっただけでむしろ損をしている状態になります。
得にするためには、来年2月~3月前半(2016年2月)に確定申告を行わなくてはなりません。還付は5年以内ならいつでもいけるかと思ったけど、ネットの情報を見てみる限り3月前半までにやらないとだめっぽい?

戻ってくるのは確定申告後およそ1,2ヶ月で還付金が銀行口座に、大半をしめる住民税控除はそれから1年間、「給料から引かれる住民税が減る」という形でかえってきます。
だいたい6月に始まって次の年(2017年)の5月まで、毎月の給料から引かれる税金が割り引かれる仕組み。

2,3月に平日に時間が取れるような機会があったならば、この時期に税務署やら市役所に行けば広いスペースで添削を行ってくれてたりするので、確定申告が初めてでも問題はありません。
必要な書類さえ保管しておいて持っていけば、全くわかっていなくてもきっとなんとかなる。

・確定申告の際にご持参いただくもの
https://www.nta.go.jp/kantoshinetsu/topics/kakutei/jisan.htm
源泉徴収票とふるさと納税を証明する書類、保険料、医療費を払った証明書、
あと印鑑、還付先の預金通帳、2年目以降には前の年の確定申告の控えも

前年の申告書を紛失したら
http://nenza.net/2014/02/18970.html

https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2035.htm
還付申請というと結構後まで可能っぽいのだけれど、(5年ほど? 個人事業主が税金を払うのは3月前半まで。それまでに払わないと税金に遅延利息が発生する)、ふるさと納税の還付はダメなのかな?住民税に関わったりするからでしょうか。
国民保険料だか住民税に関して、既に払った分を還付金として返してもらったこともありましたが、あれはどういう状況だっただろうか・・・

確定申告を忘れてしまってたら、一度電話で確認してみるといいかもしれません。まだ還付を受けられるかも。
忘れずに終わらせるに越したことはないのですが。